第9回 HDR画像を使ったレンダリングの初歩(2)

第9回 HDR画像を使ったレンダリングの初歩(2)

第9回 HDR画像を使ったレンダリングの初歩(2)

第9回 HDR画像を使ったレンダリングの初歩(2)

皆様こんにちは。開発部より第9回です。

 以前、「開発部より 第4回」でHDR画像の使い方を紹介しましたが、大域照明を使わない場合でも簡単に質感を向上させる方法についても説明すべきとのご指摘をいただきました。そこで今回は、大域照明を使わない場合に、簡単に設定できてレンダリング時間もかからない方法について説明します。
 また、HDR画像を背景に使う場合に、簡単に無限遠光源を設定するスクリプトも作ってみましたので、是非使ってみてください。

リアルなハイライトを再現する

 前回も説明しましたが、HDR画像は、BMPやPNGなどとは異なり、より豊かな階調を保持することが出来る画像フォーマットです。このことは特に、ハイライトの再現において簡単に実感することができます。

 今回は、以下のようなシーンから始めます。背景は、Shade 12のサンプルとして付属している「Offfice_buildings_1.shdbgr」を適用しました。大域照明は使いません。


(色補正ウインドウのガンマは2.2に、彩度を変えないチェックボックスをオンにしています。)

 まだこの状態では、拡散反射の色を設定した以外は、それぞれの形状の表面材質は初期状態のままです。

 ここで、あえて表面材質の「光沢」をゼロにします。さらに「反射」を少しだけ入れます。(ここではさらに、フレネルの値も上げています)

 

 どうでしょうか? 光沢の設定はゼロにしているはずですが、より現実感のあるリアルなハイライトが再現出来ているかと思います。これは簡単に言っ てしまえば、背景のHDR画像に、通常の画像よりも明るい情報が記録されているからです。もしこれがHDR画像では無く、通常の画像形式の場合だと、ハイ ライトの映り込みを増やそうとしても、必要のない形状や風景まで映ってしまったり、すぐに鏡のような材質になってしまったりして、うまく設定することが難 しくなります。

 特に、車のボディのような「塗装された金属」の表現などに大きな効果が得られます。
 また、金属や鏡などのように、明らかに反射が強い質感ではなくても、微妙な反射を入れることで、"てかり"のある材質(ガラスやプラスチック、ビニールなど)に応用できます。

※ 「リアルな映り込み」が目的ならば、必ずしもHDR画像を使う必要はありません。たとえば、実際に映り込み用の形状を配置して、その形状の表面材質の「発光」の設定値を1.0よりも大きくすることでも、同じように、その形状の形を反映したハイライトを再現することができます。

無限遠光源の方向を設定する

 特に今回は、大域照明を使っていませんので、背景にHDR画像を使っていたとしてもシーンがうまい具合に明るくなってくれるようなことはありませ ん。ですので、自分で適切な光源を設定してシーンを照らす必要があります。しかし、背景とマッチした位置に光源を設定するのは意外と手間がかかります。下 の画像のように、背景画像に写っている影と実際にレンダリングした形状の影の方向が異なってしまうこともよくあるかと思います。


(画面左の、地面に落ちている影と、形状が落としている影の方向が違う)

そこで、背景画像から自動的に無限遠光源の方向を設定する簡単なスクリプトを作りました。
以下のリンクからスクリプトをダウンロードし、ダ ウンロードしたスクリプトをShadeのインストールフォルダにある「scripts」フォルダ内にコピーしてから、Shadeを再起動するとスクリプト が使えるようになります。(スクリプトメニューの「その他...」から .py ファイルを指定しても実行できます。)

背景から無限遠光源を設定.py ※  (右クリックしてファイルとして保存してください)

HDR背景を設定したシーンを開いた状態でこのスクリプトを実行します。すると、背景画像の中から最も明るい位置を見つけて、自動でその位置に無限遠光源の方向を設定します。

※ 背景のレイヤのうち、最も上の階層に設定されている画像を元に計算します。
※ 背景画像は、球投影のみに対応しています。その他の投影方法を選択している場合は、正しくない結果になります。 
※ 計算時間を短縮するため、厳密な計算をしてませんので、多少位置がずれることがあります。
※ 方向以外の設定は変更しません。

あとは、無限遠光源の明るさや色、影のソフトネス(パストレーシングでのみ有効)、フォグなどを設定して、背景となじませます。また、ジプシーIKEDAの制作日記にも、大域照明を使わずに光源の色を設定するコツが掲載されていますので参考にしていただけるかと思います。 

いかがでしたでしょうか。今回は、あえて、大域照明を使わないレンダリングを紹介しました。レイトレーシングのみでも、設定を少し見直すだけで、よ り現実感のある質感を表現することが出来ます。また、大域照明を使う場合と比べて、レンダリング時間もかなり短縮する事が出来ますし、また、アニメーショ ンでも使いやすいと思います。ぜひお試しください。

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