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イベントレポート
大妻女子大「山本ゼミ」作品展II レポート
(掲載日:10.03.08)
「PCとインクジェットによる衣表現」と銘打たれたこの展示会は、大妻女子大学の山本ゼミにとっては総決算となる、重要な展示会である。PCとインクジェット・プリンタを使うことで「布」の世界にどのような可能性が広がるのか、展示会場にお邪魔して山本先生にお聞きした。
(レポート:イーフロンティア文芸部 たきにし)
PCとは、もちろんパーソナル・コンピューターのことである。パーソナルというだけあって、個人で使うことが前提だ。このPCに、こちらも家庭用に普及しているインクジェット・プリンタを組み合わせることで、家庭でも驚くべきことが可能となる。
家庭用のプリンタで布に印刷し、それをバッグに縫製する。印刷する柄は自由に作れるので、子供が描いた絵をスキャンして使えば「自分の絵がプリントされたお弁当袋」といったオンリーワンのアイテムを作ることができる。
そもそも家庭用のプリンタで布に印刷できるというだけでも驚きなのだが、この方法であれば親子で楽みながら作れそうである。
このように、PCを使うことでこれまでできなかったようなことが可能となる。
とかく「高い」イメージのある着物だが、そんな着物がインクジェットプリンタでできるとしたら、どうだろうか。現在はまだ着物の布幅360mmに対応できるプリンタが一般的でないため、今すぐに家庭で、というわけにはいかない。しかし、着物とインクジェットというギャップは、驚きを通り越して感心してしまう。
「学生は、特殊な訓練を積んでいない、ごく普通の女の子です。でも、そんな彼女たちにもできるということは、技術的にはどこの家庭でもできる、ということなんです。PCも、プリンタも、製作に必要な技術も、すべてが一般的になれば、本当の意味でのオンデマンド・ファッションの環境が整うのではないかと思っています」
山本先生は、そう語ってくれた。
普通の人が自由に着物のデザインができるようになれば、新たな感性が流れ込んでくるようになる。実際、学生たちが作った着物のデザインには、新宿の高層ビルや人物など、これまでの着物では考えられなかった柄が使われている。
こういった感性の中から、次の時代を担う新たな伝統が生まれてくるに違いない。
さらに山本先生は、PCを使ってデザインをする上ではShadeの存在が欠かせない、と言う。通常は、実際の着物の形にしてみないと、デザインした図柄がどのように見えるかを知ることができない。しかし、Shadeで作った3DCGのバーチャルモデルを使えば、着物のテクスチャを貼り替えるだけで、どんな図柄でもすぐに着用イメージを確認できるのだ。これまでとは比べ物にならないほど楽に柄の調整ができるようになった、と山本先生は喜んでいる。
(マウスでドラッグすると角度変更が可能)
山本先生の依頼でShadeクリエイター・IKEDAが作ったバーチャルモデル。着物の図柄は山本ゼミの学生がデザインしたもの。
※再生にはQuickTimeが必要です。
紙ではなく、布だからこそできる表現を追求する山本先生のアプローチは、これからどのような方向に進化していくのか。その中で、Shadeが果たす役割はどのように変化していくのか。
とても楽しみである。