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【2008年10月2日】 第6回:後藤克典
「Shade アンロックデータ集 -撃墜王-」発売直前インタビュー
Shadeアンロックデータ集第3弾である「撃墜王」を作成したのは、プロフェッショナルCGクリエイター後藤克典氏
これまでミリタリー系のみならず、古代遺跡など様々なCGを手掛けてこられた後藤氏に、Shadeの魅力、CG制作の楽しさについて伺いました。
CGとの出会い
Shadeアンロックデータ集 -撃墜王- |
――まずはCGとの出会いについて聞かせていただけますか?
初めて3DCGに興味を持ったのは、今から15年くらい前のことです。当時私は渋谷にあるインテリアショップの店長を務めていて、とあるMacintosh専門店のショールームに貼られていた能面のポスターに目を奪われました。
「能面の優美な曲面を、これほど美しく表現できる3DCGソフトがあるのか」
と強く惹かれまして、それがShadeのポスターでした。
でもその頃のShadeは百数十万円もするソフトで、とても手を出すことができなかったのです。
――その後、どういうきっかけで制作を始めたのでしょうか。
それから数年たってから、故郷の長野県諏訪市に戻ることになりまして、建築会社の営業マンとして勤務していたのですが、東京と比べて自分の時間に余裕ができたんですね。
その時ふと思い出したのがShadeでした。かつては高嶺の花だったソフトがバージョンアップを重ねながら価格を下げ、わずか数万円で購入できるグレードが発売されていました。「この有り余る時間を使って、子供の頃の憧れだった飛行機を3DCGで作ってみよう」と思い立ちまして、CG制作を始めました。
後藤さんの作品 |
エジプトのハトホル神殿 (CG世界遺産「古代エジプト2」 ファラオの栄光:双葉社刊) |
出雲大社の復元図 (CG日本史シリーズ 「古代日本」:双葉社刊) |
宇宙ステーション |
――なるほど。最初は趣味としてCG制作を始めたわけですね。後藤さんがCGクリエイターとして独立されたのは42歳の時と伺いましたが、どんな風にデビューされたのでしょうか。
Shadeで作成した飛行機の数がどんどん増えていきまして、作ったものを誰かに見てもらいたいと思ったんです。そこで当時(2000年頃)はまだ珍しかった個人ホームページを開設し、レンダリングした作品の掲載を始めました。そこで注目を集めまして、様々なオファーがくるようになりました。2003年には初めての単行本「大空戦」が双葉社から刊行されました。
おかげさまで「大空戦」は好評で、その後、双葉社のムックシリーズでの3DCGの仕事が増えてきたんですね。
――好きなCGの世界が仕事となったわけですね。
聞くところによると「大空戦」など数冊は台湾でも出版されているとか。現在、後藤さんは、超精密「3D CG」シリーズというミリタリー系の定番ムックのほか、「Great Mechanics」(双葉社)ではガンダム関連CGの連載、食玩(バンダイ・ポピー「架空戦記」シリーズ)のパッケージ用CG制作など、多方面で活躍されています。また「CG世界遺産」シリーズ(双葉社)で遺跡や古代の人々などのCG化にも挑戦し、またJAXAの広報用CG制作など新境地を開かれました。制作のジャンルは多岐にわたるのですが、特にこのジャンルが好きというのはありますか?
現実的なものより、夢見心地のように現実離れしたものが好きですね。
例えば、工業製品や建築パースよりは古代遺跡や宇宙ステーションなどに惹かれます。
特に最近では古代遺跡の復元CGが好きになりました。遺跡の形には定説はありますが、絶対ということはありませんから、色々と想像を巡らせることができて、作る過程も面白いですね。
「Shade アンロックデータ集 -撃墜王-」について
――今回発売となる「撃墜王」に収録されているデータを作成するにあたって、苦労されたところや、工夫されたところはありますか?
飛行機はずいぶん沢山作りましたが、苦労する所はいつも一緒で、資料や図面関係を集めることですね。資料集めにコツはありません。図書館とか色々見て回ったり…。
一機あたりの制作時間は、自分の仕事で必要とする制作範囲は外観のみなので、一週間はかからないです。コクピット内部も再現するとなるともっとかかりそうですが。
――このデータ集には、飛行機の作り方の解説も収録されています。自分で飛行機を作ってみたいという方も多いと思うのですが、何かアドバイスがありましたら、お願します。
何事も同じだと思いますが、対象を好きになる事が大切ですね。
それと、自分がおおざっぱな性格なので皆さんにも当てはまるかどうかは解りませんが、あまり突き詰めすぎないことも精神衛生上重要と思います。
「飛行機なんだからカッコ良ければ良いじゃないですか」ということですね。
ただし、突き詰めるのが好きな人はトコトン細部まで突き詰めて作れるのが動作の軽いShadeというツールの良さですね。
あとテクニカルなことでは、「自由曲面」を使って作る場合、テクスチャとの関係も考えて、どこで形状を分割して作るかは考えて作った方が良いと思います。tips的には胴体と翼の接合の部分は厳密には奇麗につなげることは難しいので、割り切って後から2Dで加筆修正するという考え方もOKだと思います。
――最後に、CGの魅力についてお聞かせ下さい。
「夢や憧れをビジュアル化するのに3DCGは最適な手段の一つだと思います。この世にすでに存在しないものを3DCGならリアルに目に見える形で作れる。ぼくは、子供の頃に憧れた飛行機を、3DCGによって自分の手で作り出すことができるようになりました。また、ぼくが作り出す飛行機や古代遺跡が、大空に憧れる子供たちや、遺跡を訪れる旅行者の方に夢やロマンを与えることができれば素敵だな、とも思っています」
――本日はありがとうございました。趣味の世界からCGクリエイターに転身した後藤さんらしい、ロマン溢れる言葉でした。後藤さんが制作された戦闘機データを一挙14点も収録したShadeアンロックデータ集‐撃墜王‐、皆さんもぜひお手元にどうぞ。
アーティストプロフィール
後藤克典
東京生まれ。長野県諏訪市在住。出版、TVなどの商業メディア向けCG制作をはじめ、コンセプト・ビジュアルCG制作や大戦遺物の復元プロジェクトのためのCG制作などを手がける。 主な著作「航空100年―歴史を駆け抜けた傑作機100機」「CG世界遺産シリーズ」(双葉社)など。
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