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【2009年4月9日】 第11回:坪井弘貴氏
「Shade アンロックデータ集 -マキーナ-」
制作裏話
Shadeアンロックデータ集第4弾「マキーナ」の発売から約1ヶ月。
今回のユーザー訪問記は、「マキーナ」ふたりの生みの親、坪井弘貴氏に直撃インタビュー!
坪井氏こだわりのモデル作成技法やモーションについてお話を伺いました。
女性キャラクターの作成に行き詰っている方は必読です!!
(聞き手:西田)
前回のインタビューから1年。
Shade アンロックデータ集 -マキーナ- |
――こんにちは。いつもインタビューでは、クリエイターの方とCG(Shade)との出会いについてから聞かせていただいているのですが、坪井さんには以前に「T.H」さんとして当社のインタビューに答えていただいていますよね。そのときの答えは、たしか沖孝智氏のfeifeiに影響を受けて始めたとか。(坪井さんの前回のインタビューはコチラ)
あれから1年という月日が流れましたが、ご自身の環境の変化などはありましたか?
坪井:Shadeを通して作品を投稿し、たくさんの方々に作品を見て頂ける機会が増えたこともあり、おかげさまで最近ではイラストやモーション等のお仕事もいただけるようになりました。
そして今回のマキーナの発売を契機に、さらに活躍の場を広げられればと思っています。
Shadeアンロックデータ集 -マキーナ- ~モデリング~
――Shadeの投稿がきっかけで仕事の幅も広がってきた訳ですね。
そして、今回のデータ集「maxina」の発売にもつながったということですが・・・これまで数多くの作品を発表されてきた中で、「maxina」はどういったコンセプトで作成されたのでしょうか?また、どんな人に手に取ってもらいたいですか?
坪井:「maxina」は、より本物の女性に近づける方向性で仕上げました。
特にこれからリアル系の人物を作りたい方々に見て欲しいです。作成方法や、設定方法などいろいろあるとは思いますが、1つの方法として、参考にしていただけたら嬉しいです。
――本物の女性に近づける。なるほど、それは主にモデリング部分ですか。
坪井:モデリングでは細かな筋肉の凹凸などのディテールに力を入れてみました。
また、肌の質感についてもこだわっています。
水面や金属だけでなく、肌や服にもフレネル効果が生じると思うのですが、これにより角度によってエッジ部分の反射が変化し、強調されます。
このような質感を適用されている方はあまりいないかもしれませんが、よりリアルに近づける為にちょっと変わった方法で設定してみました。
テクスチャについても多少の擬似的な陰影、シミやソバカス、血管などもうっすらと入れてみました。
――すごいこだわりですね。今回の「maxina」は女性のキャラクターですが、女性の造形において最も重要なところはどこでしょうか?
坪井:一番重要なのは顔ですね。
女性の顔はそれぞれのパーツの細かな配置や大きさで、大きく変わってしまいます。
リアル系のキャラクターは、特にその調整が難しいですね。
生き生きとした感じを出すため表情にも力を入れています。不気味にならないよう特に気をつけながら作りました。
あとは胸、ウエスト、脚など、女性の魅力を表現する部位ですね。どれだけ女性らしいラインを表現できるかが鍵だと思います。
――ちなみに今回のキャラクターにモデルはいらっしゃるのでしょうか? また、ファッションの参考にされているものはありますか?
坪井:特定のモデルはいません。各パーツごとにお気に入りの女優などを参考にしてはいますが。
ファッション雑誌はVIVIやJJでしょうか。直接店頭で買う勇気はないので、ネットで購入してます(笑)。
Shadeアンロックデータ集 -マキーナ- ~モーション・ライティング~
――ところで、「maxina」には、モーションデータが付属していますね。
以前のインタビューでも今後は動画に挑戦してみたい、ということをおっしゃられていましたが・・・
坪井:今はまだ基本的な動きをいろいろ試しているところですので、ある程度理解した上で、本格的な動画作品を作りたいと思っています。
――モーションデータの作成で一番力を入れた点は?
坪井:「maxina」のモーションについては、すべて手付けでキーを打ちました。
nanaの歩行中に遅れて動く腰や各関節と、最後の決めポーズ、makiでは目や表情の動きに力を入れています。現実に存在しそうな女の子の動きを意識してみました。
一番注目してほしいのは、おおまかな動きよりも細かな動きですね。たとえば、一歩踏み出して地に足をつけるときに、その衝撃が足~腰~頭へと伝わります。その衝撃が微々たる時間差によって伝わり少しだけ動きます。
それから表情です。目の瞬くスピードや目玉が小刻みに動く様子、少しずつ変化していく様子など観察していただければと思います。
顔の表情は、モーションでコントロールできるよう変形ジョイントで制御しています。不便に思われるようでしたら、スイッチジョイントに変えてみてください。
――今回はライティング設定にも力を入れたそうですね。
坪井:ライティング設定はシンプルなものから、リアルなものまで計4種類用意しています。
中でもより現実的な光源を設定する為に用意した「リアル」ライトがあります。
これは擬似的に天空光や反射光を表現してみたものです。
最終的なレンダリングにはこの設定で試してみるものいいかもしれません。
――ライティングについては、みなさん重要性をご指摘されます。
坪井:リアル系なキャラクターでは、光源による陰影の表現が大切です。正面から当てると平面的になりますし、ライトが少ないと陰影がくっきりし過ぎてしまいます。
それを考慮して光源を上空から当て、何灯か配置して陰影をやわらかくすることが大切だと思います。大域照明を使えばそれを補えるのですが、アニメーションのことを考えると、リアルということに加えシンプルであることがベストだと思います。
――制作で最も大変だったところなどお聞かせください。
坪井:大変だったのは、スキン設定です。
服と体との兼ね合いが大変でした。特にスカートは調整が難しかったので、スカート用のジョイントを設定しました。ですので、なるべくバインド一発で設定が済むように、固定ジョイント等で制御してみました。
――Shade 10.5が発売されますが、Shadeに対する要望など教えてください。
坪井:追加してほしい機能はモデリング機能の強化と、アニメーションやボーン機能の強化です。
特にIK機能が強化されれば、キャラクターを作るうえでとても助かります。
Shade 10.5のマルチパスレンダリングは、面白そうですね。レンダリング後にも調整の幅が広がりそうです。また、スナップ、作業平面機能の追加によりモデリングによるストレスがだいぶ軽減されそうです。
3DCGについて
坪井さんの作品 | |||
――さて、ここまで坪井さんのモデル作成・モーションについての制作方法やこだわりをお伺いしてきたわけですが、ずばり3DCGとは、坪井さんにとって何でしょう? また、最近3DCGについて思うことがあればお聞かせください。
坪井:パースや陰影の描き方が苦手だった私にとっては、3Dはそれを補うことができる便利なツールです。
また、3Dを使うようになってライティングなどのノウハウや理解やが深まり、それを2Dイラストへ応用させられるようになってきました。 いずれは3Dと2Dとをミックスした作品を作りたいですね。
ところで、一年前くらいからWebで流行っている作品投稿サイト「Pixiv」を拝見しているのですが…
作業自体が大変だからでしょうか、3D作家って少ないですね。
3Dには、キャラクターや背景を一度作れば、アングルやポーズ、演出を様々に変えて見せることができるという魅力もあるので、もっと普及して欲しいですね。
――普及して欲しいなあ。一見敷居が高そうですが、おっしゃられたように多様な使い方ができるので、部分的に組み合わせるなどしても面白いと思います。
それでは、最後にこれからShadeをはじめる方にメッセージをお願いします。
坪井:探求心を失わなければ、必ず誰でも良い作品を作れるようになります。
あとは、自分自身にしかできないテイストを持つことでしょうか。
―― 3DCD制作をこれからはじめる方には是非参考してください。今日はどうもありがとうございました。
坪井:ありがとうございました。
アーティストプロフィール
T.H/坪井弘貴
静岡県生まれ。2Dイラストレーションから3DCGまで幅広い作品を手掛ける。
CGアートコンテスト2005、日本イラストレーター協会公募展、ASIAGRAPHなど受賞多数。
Webサイト:http://dezasaikyo43.web.fc2.com/
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