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第13回:~CGの世界における日本とアジアの地位とは~

第14回:スーパーソフトウェア株式会社
CAD開発本部 イノベーション推進部 部長 大津陽平さん

~CADソフト開発 実サイズにこだわった正確な表現の実現~

【2009年9月18日】

今回は、弊社が技術提供している建築CAD向けファイルフォーマット「SPEED」※1に対応、かつShadeのレンダリングエンジンを実装したCADソフト「SuperSoft」II※2を発売されたスーパーソフトウェアさんに話を伺いにお訪ねしました。
対応してくださったのは、CAD開発本部 イノベーション推進部部長の大津陽平氏。「SuperSoft」Ⅱ開発の中心人物です。

(聞き手:西田 イーフロ文芸部)

開発の経緯/Shadeとの接点

――まずはShadeとの接点を教えてください。

はじめてShadeに出会ったのはずいぶん前になります。
当時は、Shade 4の頃だったでしょうか。私どものCADソフトで使っているGDL部品のインポート機能がShadeに実装された頃です。その頃に、CADソフトでも高品質なレンダリング機能を検討していたんです。競業他社においても高速で高品質なレンダリングが求められていた時期で、優れたレンダリング技法であるラジオシティに注目し、いくつかのソフトを検討するなかでShadeに出会いました。
国内での開発ということでコミュニケーションのとり易さも大きなメリットだと考えました。


「SuperSoft」確認申請書エディタ画面


「SuperSoft」3Dパース例

ただ、その時は、プレゼン資料のための綺麗な絵をつくる、ということよりも図面や積算などの後工程の分野に商品戦略の重点を置いていこう、という風に社内での開発コンセプトが変わり始めた頃で、高品質のレンダリング機能の優先度が下がってしまいました。

平成12年から「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、住宅性能表示制度※3というものが実施されました。
私どもの「SuperSoft」では、プレゼン資料で必要な綺麗なパース図の作成機能も備えてはいますが、この制度の規格に合った確認申請の図面や書類などを簡単に作成するための機能の充実などを優先させたのです。

―― Shadeのコンセプトとは違う方向に進んでいったわけですね。
なるほど、そうしてしばらく時間をおいた後、いよいよ「SPEED」という接点でShadeと再会するのですね。

3,4ヶ月に一度CADベンダーで集まっていたHITSフォーラムというものがあったんですけども、2007年1月ごろ、次世代の3D部品の共通のフォーマット(まだ当時は、「SPEED」ではなくEフォーマットと呼んでいましたが)についてで議論されるようになってきました。
そこで、先行していくつかの企業にアプローチをされていた他社の方からイーフロンティアさんを紹介され、再びShadeの名前を聞くことになりました。
当時、会社の所在地がお互い非常に近かったということもあり、私どもから軽い気持ちで訪ねてみることにしました。
建築の3D部品やフォーマット作成についての説明に行きましたが、最初のうちはフォーマット云々というより、レンダラーをShadeにできないか、別のビジネスの切り口として上手くまとまらないかと冗談混じりに話していました。

そうこうしているうちにCADベンダーの集まりの中で共通フォーマットの必要性が強く議論されるようになりました。また、CADとしても新しいことを始めないと、といったような意見も多く出始めました。

そして、決意を固め、Shadeの開発者である時枝さんにお会いすることとなりました。そこで、お互いうまくやっていけるだろう、と確信を得ました。モノ作りの人間として当社スタッフ一同、意気投合をしたのです。
技術的な事柄だけではなく、感性やコミュニケーションもプロジェクトの実現には不可欠です。

――そうだったのですか。そうして順調に進んで行ったわけですね。

プロジェクト始動

ところが、大変だったのです。
一言で言うと、CADソフトのメーカーとCGソフトのメーカーでは見ているものが違う、こだわるところが違うんです。

――え? コミュニケーションがとりづらかったということでしょうか?

通常のやり取りに問題はないんですが、細かいところを突き詰めていく段階になると、まるで考え方が違うことに気づくんです。概念やニュアンスなどが根っこのところで違うので、同じテーマで話しているつもりが、いつの間にかお互い違うことについて喋っている、といったようなことになっているのです。

――業界が違うと、こういった問題があるのですね。しかも、全くの無関係の業界でもなく、微妙な距離を持っているから余計に間違いに気づきにくそうですね。

そうなんです。技術的な大変さというものも普通にありましたが、その微妙なニュアンスの違いを埋めるところ一番の苦労どころでした。
例えばShadeは自由曲面によるモデリングに特徴があり、実寸という概念が希薄という印象があります。対してCADの構成要素の大部分は直線であり、実寸を正確に表現しなければなりません。このように出発点が違っていると、いろいろな所で齟齬をきたします。

――今回、部品を全てSPEEDフォーマットに変えられたということですが、全部制作されたのでしょうか?


『SPEED』に対応した部品

これまではGDLフォーマットと呼ばれる部品を使っていましたが、今回全てSPEEDフォーマット部品に変えました。玄関ドアやシステムキッチンなど、沢山の種類の膨大な数の部品を全て制作する必要がありました。特に建具などのパラメトリック変形※4する部品をSPEEDフォーマットに合わせて作ったのですが、制作過程においてフォーマットそのものの仕様や制作指針そのものを見直す必要もありました。やればやるほど、次から次に新しい課題が出てくるので、それらをひとつひとつ解決するために大変な時間がかかりました。

「SuperSoft」Ⅱの特徴


「SuperSoft」Ⅱ 平面詳細図

――なるほど。大変な苦労をされたのですね。そうして完成に至った「SuperSoft」Ⅱですが、前バージョンと比較してどのような変化があったのでしょう。

今回SPEEDフォーマットの採用によって設計図面上の線の表現がより高度に、豊富になりました。今までは部品の図面化をこちらのプログラムに都合の良いように解釈して簡易的な線として表現していたのですが、メーカー部品の正確なデータを実装することにより、リアルなサイズで細かな図面が作成できるようになりました。

そして、それを100%生かすための手段としてのShadeのレンダリングエンジンの採用となります。
Shadeに慣れている人は、このレンダリング結果を見て、Shadeの作品と思われるかもしれませんね。

SuperSoft」II レンダリング結果  室内   SuperSoft」II レンダリング結果  外観
「SuperSoft」II レンダリング結果   「SuperSoft」II レンダリング結果

ただし、ラジオシティは計算時間がかかることもあり、採用していません。Shadeのレンダリングもバージョンアップを経ることによって品質が向上しています。パストレーシングで十分ニーズに応えられると判断しました。
このあたりがCADソフトとCG作成ソフトとの違うところで、綺麗なパースではなく、リアルなパース、実サイズにこだわった正確な表現を目指しました。
正確だから綺麗とも言えます。ごまかしのないものから生み出された結果であり表現としてこれ以上はない、という組み合わせです。
真面目に描いているCADプログラムに真面目に映し出すレンダリングエンジン、真面目に作り込まれた実寸サイズのパーツ、非常に職人気質のものになっています。


「SuperSoft」Ⅱレンダリング設定

操作は、簡単です。建築しか分からない人でもShade のベテランユーザーのように作成することができます。複雑な設定はすべて隠し、いくつかの要素のみ設定、ボタンひとつでレンダリングを実行します。

また、Shade10.5と完全なデータの互換性を持っています。「SuperSoft」Ⅱでのレンダリングだけでは満足されないお客様には、Shadeに持ってきて仕上げをしていただくことができます。
レンダリングの品質を上げれば上げるほど処理時間がかかってしまいますが、そういった場合には、ShadeのGrid※5を利用していただくなどすると良いでしょう。

――これはすごいですね。
最後に開発に携わってのご感想や「SuperSoft」Ⅱが発売されたことでのCAD業界への影響などについてのお考えをお聞かせください。

「良いモノを作っていける環境」がやっと揃ったかな、という感じです。他社と比較してもきめ細かい線の図面作成のツールを提供していた当社ですが、これによりさらに正確さに磨きがかかりました。

業界への影響、というと大げさですが、全体的な品質は上がっていくでしょうね。少なくとも「SPEED」という共通フォーマットを使っているメーカーにおいてはそうなるでしょう。
スーパーソフトウェアは常に、他社より良いものを皆様に提供していきたいと考えています。今後も引き続き開発スタッフ一同、頑張っていきたいと思います。

――今日はありがとうございました。

ありがとうございました。

関連リンク

※1 SPEED・・・建築CAD共通 3Dフォーマット「SPEEDフォーマット」のこと。従来の汎用3Dフォーマットで課題とされた点を克服し、建築業界全てに有効な働きをもたらすことを前提に考えられたオープン・フォーマットの新しいデータ形式。

※2 「SuperSoft」II・・・2009年7月17日発売。木造住宅一気通貫のCADシステム。
前バージョンの『SuperSoft』は、1996年3月発売。大手住宅メーカーや地場ビルダーを中心に幅広く利用されている木造住宅向けのCADソフトウェア。プレゼンテーション、確認申請、長期優良住宅、性能表示、見積もり、実行予算(積算)などの業務プロセスをカバーする。
『「SuperSoft」Ⅱ』は『SuperSoft』の特長に加え、建築CAD向け共通部品フォーマット『SPEED』に対応したCADエンジンを搭載することにより3DCGパースのクオリティを大幅に向上させている。

※3 住宅性能表示制度・・・平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく制度で、 良質な住宅を安心して取得できる市場を形成するためにつくられた制度で、住宅の性能に関する表示の適正化を図るための表示方法や評価方法の基準を設ける、などの内容が盛り込まれている。

※4 パラメトリック変形・・・パラメータ(数値などの値)をユーザーが指定するとそれに応じて形状が変形する機能。

※5 Shade Grid・・・手元のShadeで行っているレンダリング計算を複数のコンピュータに分散して処理することで、より高速なレンダリングを実現する機能。この機能を使用するには、Shade 10アプリケーションがインストールされたコンピュータと、ShadeGrid 10 Serverプログラムがインストールされた1台以上のコンピュータが必要。

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